楠本涼 / Ryo Kusumoto

連師獅/Renjishi.(2016-2018)

連師子/Renjishi

2016-2018 JPN

これは、国内外で活躍しつつも異端の舞踊家として生きるやまとふみこさんの物語だ。舞踊の演目「連獅子」になぞらえながら、あぜ道を這い上がった彼女の人生で、他者と愛や芸を授受する難しさや曖昧さを表現した。


彼女は、戦後舞踊界が最も栄えた時代に最前線で活躍し、77 歳になった現在も舞い続けている。女性としての生き方も、尊敬される流派も、表舞台での活躍すらも、全てを捨てた道程は、厳格で保守的な日本舞踊家と大きく異なる。


私たち日本人は、“著名さ=価値”と捉え、伝統という言葉に無条件な憧れがある。にも関わらず、そこには世代を問わず劇場へ足を運ばないという深刻な矛盾が存在している。私にとってこの矛盾は、価値判断を放棄する身軽さがあるのと同時に、著名さとは無関係の身近な隣人たちに対して、容易にその存在価値を否定したり切り捨てたりできる冷たさがあるようで不気味だった。いつか自分が他者と何かを授受する大事な岐路に立ったとき、自身のことをどう捉えるのだろうか。この点において、既存の価値観に捉われない彼女の人生選択とその裏側での葛藤には、稀有な魅力があった。それが本プロジェクトの初期衝動だ。ゆえに舞踊の美しさや伝統云々は、この物語の本質では無くストーリーテリングのツールである。


取材中、私は舞踊を始めた頃の彼女の写真を手にした。彼女の全身をえぐるように開けられた虫食い穴が、愛情への飢えに苦しんだ当時の彼女を雄弁に語る暗喩になっていると感じた。舞台上と私生活に共通した一筋の光を当てることで見えた、虚と実の世界を行き来する舞踊家の生と陰。70 年以上の時間をさかのぼり、複製・コラージュ・印象の喚起や連結など、写真が持つ様々な特性を利用し、シームレスかつ多層的にまとめた本作は、古典演目「連獅子」に敬意を表しつつ、新たに解釈したものとなった。


*「連獅子」とは中国の「親獅子が子獅子を谷底へ突き落とし、崖を駆け上がってくる様を見守る」という伝説に由来する。これが日本に伝来し、能や歌舞伎など独自の文化に進化した。白色が親獅子、赤色が小獅子を示し、親子の慈愛や道を切り開く逞しさの象徴として、日本舞踊にも残っている。

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