楠本涼 / Ryo Kusumoto

surroundings.(2008-2009)

surroundings

2008-2009 JPN

画角に入り込んだ登場人物の数だけ、各々のドラマが存在する。無意識に通り過ぎるはずだった他者の存在を意図的に抽出し、劇中の一場面のように独善的に捉えなおすことで、新しい物語を生み出す。

A氏とB氏がコーヒーを飲むテラス席があったとする。カメラを100メートル離れたところにセットすれば、そのテラス席のある小さな建物は、得体の知れない大きなモンスターが後ろ側から覗き込もうとする物語の一場面へと変わる。A氏とB氏の存在は、別の舞台の添え物に切り代わり、登場人物は交錯することなく無意識に共存していることに気づくだろう。それは、我々が日常的に無数の言葉を思い浮かべながら自我を保持していることと、決してそれらが、物理的に自身を取り囲む環境とが本質的に混ざることがない象徴のように思えた。

たとえそれが空想の遊びであっても、瞬間的に結びつけた周囲との位置関係には、偏見やが物語として形を成し、データ報道とは異なる方向から、現実の世界を示してくれる。